ガラガラっと教室に入ります。
みんな一斉に灰原さんを見ます。
みんな、灰原さんのことが分かりません。
まぁ、当然ですね。凄い変わりようですから。
「おい。あんな子、いたか?」
「いや、知らない。」
「あんな子、居たら覚えてるよ!」
でも、一人だけ灰原さんのことが分かりました。
佐藤さんです。
「灰原さん?」
「あ、昨日は先に帰ってごめんなさい。」
一気にクラスがどよめきます。
地味で私よりは可愛くない子が一晩で美人になったのですから無理もありません。
「灰原さん?どうしたの?そんなに可愛くなって・・・」
ピク
「さ、佐藤さん、私、可愛いですか?」
「・・・うん。可愛いよ。」
「嬉しいです。」
パーっと花が咲くように笑顔になる灰原さん。
「う、・・・可愛い」
キュンと来てしまった佐藤さん。
そして、はっと昨日のことを思い出しました。
「もしかして、昨日の話。聞いてた?」
「・・・・・・はい。」
「そんな、俺は・・・」
「佐藤さん。好きな人に可愛いって思って貰いたいのは当たり前です。佐藤さんのためなら、私はどんな女にだってなっていきたいです。」
「灰原さん・・・」
佐藤さんは改めて自分がどんなに愛されているか自覚しました。
「灰原さん、いや麗子。俺も麗子に似合う男になるから、俺とずっと一緒にいてくれ。」
佐藤さんは愛の告白をします。
灰原さんの答えはただ一つです。
「・・・はい。」
こうして、
自ら灰を被った灰かぶり姫は、
魔女の魔法もカボチャの馬車も使わず、
自力で王子様との幸せを手に入れました。


