はぁ。今、イケメン腹黒野郎に送ってもらってるんだけど、
お互い一言も喋らないから、本当に気まずい状況。
ていうか、こいつはあたしの家知ってるのかな?
お願いだから、何か喋ってよ。
「なぁ」
「な、なに?」
「お前「ちょっとやだ~、悠紀ったら~」
え?今、悠紀って言ったよね‥‥?
嫌な予感がした。
直感で振り向いちゃいけないって分かった。
でも、好奇心には勝てず振り向いてしまった。
「っあ」
悠紀だ‥‥。
隣にいる派手な女の人は誰?
悠紀もどうしてそんなチャラい格好してるの?
その女の人と付き合う為に、あたしと別れたの?
どうしてそんなに変わってしまったの?
色んな疑問が頭の中を駆け巡る。
でも、あたしの中身のない頭でいくら考えても
悠紀の気持ちが分かるはずもなくて。
あ、こっちに向かって歩いてくる。
その場から離れなくちゃいけないことは
分かってるのに、足が鉛のように重くて動かない。
お願い、あたしに気付かないで。
「っ‥‥友莉」
「えー?この子知り合いなの?」
「っ。いや、知らないよ。ほら、行くぞ」
悠紀があたしの名前を呼んだ。
それだけで、以前のあたし達の思い出が蘇ってきた。
あの頃は、幸せだった。
「っ!」
あたしはまだ悠紀忘れきれてないのに。
あたしは悠紀の中で、きれいに忘れ去られてるんだね。
そう思ったら、涙が出てきた。
悠紀の目は、すごく冷たい目をしていた。
でも、あたしの横を通り過ぎる時、ごめんなっていう悠紀の声が聞こえた気がした。
あたしの思い違いかな‥‥。
「おい、大丈夫か」
