キーンコーンカーンコーン♪
私は急ぎ足で音楽室に向かった。ドアをあけると彼はいた。
「飯田また来たのか。最近よくここに来るよな」彼は繊細な笑顔で私を見た。「だってここ落ち着くんだもん。先生、ピアノ弾いてよ」そう、彼は音楽の先生。いつだろ?彼に恋をしてしまったのは。この高校の入学式の時に先生を見たときから好きだったのかもしれない。私は少しでも先生に近付きたくて 放課後は音楽室に来ている。「しょーがないなぁ。飯田は何弾いてほしい?」「う~ん。なんでもいいよ」正直、クラッシックの事のついては詳しくない。興味もない。ただピアノを弾いている先生が見たくて。「いっつもお前は何でもいいって言うから困るよ」と彼はいつも言う。でも 先生はピアノに指を置き弾き始める。先生はまだ新人の先生らしく若い。22歳らしい。まだ研修生だけどこの高校の音楽の女の先生よりも絶対にピアノが上手。長い指がとても綺麗でずっと見ていたくなる。一重だけどまつ毛が長くて優しい目をしている。鼻が高くて薄い唇。私は先生の全てが好きだった。
「おい!終わったぞ」「っあ!す、すごかった」私は先生の顔を見上げた。「飯田、今の絶対聴いてなかっただろー」先生は軽く笑った。「ちゃんと聴いてたよ」先生はそうかと頷いた。私はずっと一つ聞きたい事があった。「先生…。」「ん?」「ずっと聞きたかったんだけど、彼女っているの?」緊張して顔が見れない。「さぁね」私は先生の顔を見上げた。え?何それ。「さぁねって、答えはいるかいないかだよ?」少しイライラしてきた。「ご想像にお任せします。ってか、俺に彼女がいようがいるまーが飯田には関係の無いことだろ?」何気ない一言がとても私の心を締め付けた。ちゃんと…ちゃんと答えてよ。関係なくないよ。私は好きなんだから。先生の事好きだから…。言葉でちゃんと伝えたかった。もちろん私にはそんな勇気ない。「そ、そうだよね。あはは。何言ってんだろう。何かごめんね?私もぅ帰るね」私は机の上に置いてあるカバンを手に取り 走って音楽室から出て行った。後ろから先生の声が聞こえたような気がしたけど私はそのまま足を止めなかった。絶対彼女いるんだ。だって いなかったらいないって言うし。さすがにさっきの言葉はキツかったな。私はそのまま家に着いた。