からっとした青空が映し出される。
次に長い鯨幕が続き、主人公が歩いている。背が高く髪が短い。
やがて海へでる。主人公は立ち止まって、海の方へ目をやる。
砂浜に真っ赤な着物の女性が立っている。そしてこちらを見て、笑った。
タイトルバック。
『白日夢』
主人公は黒服で、葬式へ行った帰りであるようだ。
己の目を擦るような仕種をし、再び砂浜を見る。すると真っ赤な着物の女性は消え去った。
「なんだ、白昼夢か。」
主人公はぼそりと呟き、踵を返して海岸沿いのアスファルト。
場面が一転して、妙に暗い工場が映し出される。主人公が急に笑い出した。
若い男が一人、それを見ている。男は顔色一つ変えない。
また、場面が一転する、海岸沿いのアスファルトの道へ。
主人公はバスの停留所で備え付けのベンチに座る。周りには人っ子一人いない。
「何故、死んだ・・・・。」
主人公の一人ごと。
ふと主人公が顔を上げると、着物の女が道路を隔てた逆方向の停留所のベンチに座って、こちらを見ている。また、笑った。
「お前は、幻か・・・。」
主人公が怒鳴る。女は笑ったままだ。
「・・・・・・。」
主人公の息が荒くなる。
場面が再び一転する。暗い工場だ。
若い男が首を横に振る。主人公は男にすがりつくが、男はそれを冷たく見下ろすだけだ。
「裏切ったな・・。」
主人公が鬼気迫った表情で言う。
場面が戻る。
主人公の前にバスが止まる。扉が開くが主人公は無視する。
バスの扉はしまり、バスは行ってしまう。
向こうにはもう着物の女性はいなかった。
主人公は走り出して、道路を越え、向こうの停留所へ行く。
向こう側。辺りを見回すが、誰もいない。
(続く)