追憶〜逢いたい人へ〜


今日は、客の入りもそんなになく、少し暇だった…。


暇なときって大体、時間がノロノロ遅く感じるのに今日は違う…


あっという間に5時間がたった…。



あの派手な車の音がする…



…あっ…勇だ……




駐車場にはあのスポーツカーが停まっていた…。



時計の針は10時を指していた…







『上がっていいよ、千代ちゃん!』


店長の明るい声がした。


『お疲れ様でした!』


そう挨拶をしてタイムカードを押した。


制服を脱いでいると、店長が、

『外にさぁ…芸能人の古田勇がいるんだよ!超かっこよくてさぁ〜!誰か待ってんのかなぁ〜?!』



…その“誰か”は私です………店長ぉ…………



と、心の中で叫びながら、淡々と身支度を整えた…


『さっき、サインと写真頼んだら、今はプライベート中だからって断られちゃったよ…』


…ミーハーだな……この店長………



『残念でしたね!お先で〜す!』


サラリと店長を交わして従業員出入口から外に出た。