宇美は速水と会うことが何よりも楽しみになった。会うことはデートだと捉えていた。宇美は“あたし”モード全開で速水に恋してしまった。友達には感じたことのない気持ち。自分以外に大切な人ができるという感覚を初めて知った。こんな気持ちは初めてだった。宇美は速水といる時の自分が一番好きだった。二人の息はピッタリだった。眼力のある真ん丸い垂れ目に、短髪直毛のクリクリ頭。色白の肌に薄い毛の手足、一度聞いたら忘れられない低い声、右手をちょこんと上げる癖、眠くなると頭を撫で回す癖、別れる時は必ず握手を求める癖。ハッキリものを言うところ。子供みたいに無邪気な笑顔が最高だった。特にブランド志向ではなかったが、いつもロレックスの時計を左手に付けいて、BMWの318iに乗っていた。親父くらい歳が離れているのに、しぐさが時々可愛いく見えた。おじいちゃんの臭い(オッサン特有の加齢臭)はしなかった。いつしか宇美は速水をおもいっきり抱きしめたいと思った。いつも隣で速水を感じていたいと思った。ずっと速水の気持ちを独り占めしたいと思うようになった。
