夏休みに入った。宇美は速水と毎週野球観戦に行っていた。宇美も速水の影響を受けて大分野球の楽しさがわかるようになっていた。速水の奨めもあって、牙オッテのファンクラブにも入会した。宇美は速水と一緒にいる時間がなにより幸せだった。いつのまにか速水を一人の男として見てしまっていた。もちろん速水もオナニーリストに加わった。妄想Hはリアルだった。宇美は速水に優しく抱かれた。でも速水は特別な存在だった。しだいに宇美は速水とは体ではなくて、心で結ばれたいと思った。不思議な感覚だった。最初の印象は最悪だったのに、今では存在全てが愛おしくなっていることが信じられなかった。速水はお世辞にもかっこよくない。体型は小太りで、腹も少し出ていた。ケツもデカかった。宇美の対象外だった人だ。でも一緒にいると頼もしくて安心できた。宇美は理想と現実のギャップを実感していた。速水は宇美を子供扱いしなかった。試合の帰りは必ず定食屋によった。そしていつもご馳走をしてくれた。速水はタバコは吸わないし、ギャンブルもやらなかった。ただ、酒が好きだった。試合の帰りはいつも飲んで酔っ払った。牙オッテの勝敗は関係なかった。毎回飲む量が増えていく気がした。いつしか宇美はお酒以外で速水と同じメニューを頼むようになっていた。二人で同じものを食べ、同じ時間を共有したいと思うようになっていた。二人の思い出をたくさん作りたいと思った。速水は野球の話題のみならず、政治、経済、国際社会までありとあらゆる情報に精通しており、いろんな話をしてくれた。海外経験も豊富ならしく、過去に行った国の話をしてくれた。いろいろ知っているのに自慢げではなところが魅力的だった。宇美は話を聞く度に尊敬してしまった。宇美にとって速水は先生とか友達の枠を超越した存在だった。素敵な人だった。
速水が携帯電話をいじっているところは見たことがなかった。前に一度見せてくれた時、多面ライダーのストラップが付いていた。
速水が携帯電話をいじっているところは見たことがなかった。前に一度見せてくれた時、多面ライダーのストラップが付いていた。
