聞こえてなかったわけじゃない。 でも 今の俺は正直それどころじゃなくて。 「全然 食べてないじゃない」 手つかずのまま放置されたケーキを優衣が不機嫌そうに指差す。 「ここのケーキ、超美味しいんだよ?」 「今から食うよ」 「さっきから上の空だね。もしかして雪乃さんのこ…」 …プルルル 優衣の言葉を遮るように俺の携帯が鳴る。 もしかして雪乃? 俺は慌てて携帯を取り出した。