亭主関白を気取りたいなんて
気はサラサラないから、
自分で玄関の鍵を開けて
中に入った。



そして、玄関もその先に
続くリビングも真っ暗な
ことに気づいて、初めて
ドキリとした。



(いない―――…?)



なんでだ? 今日はアイツは
定時であがったはず。



予定があれば聞いているし、
急に何か用事が入ったなら、
普通はメールをよこすはずだ。

だがそんなメールは、
来ていない。



(おかしいな……)



こんなことは初めてだ。


一日の終わりに、梓が
行き先も告げず、どこかに
出かけてしまうなんて
ことは……。


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