挨拶だけしてやりすごそうとしたとき、手嶋先生に呼び止められる。

「何か言いたいことがあるならどうぞ」

手嶋先生は一枚も二枚も上手だ。
俺はいつまで経っても彼に頭が上がらない。

「えっと…」

俺が口ごもっていると、手嶋先生はさっさと歩き出し、数歩先で俺を振り返る。

「置いていくぞ」

俺は慌てて彼を追った。
手嶋先生が車を置いてきたから見当は付いていたが、俺たちは駅前の居酒屋に入ることになった。

手嶋先生と二人で来るのは久しぶりだった。

手嶋先生が無口なこともあり、気付けば俺たちは無言のままビールを二、三杯飲み干していた。