失敗した。
俺は今、確実に答え方を間違った。

「先生があの子を好きなの?」

俺は答えない。
いや、答えられない。

「否定しないんだ。
さっきも階段であの子を見てたんだね」

中村はぽつりとつぶやく。

「もういいって」

「良くないよ。
私は先生がまだ好きなの」

中村が俺に抱きついた。
彼女の涙が俺の肩に落ちるのを感じる。

どうすれば良いのだろう。
中村の気持ちに応えることはできない。

不意に振り返ると、遠くで山田が立っていた。
手には俺のタオルが握られている。

彼女は俺の視線に気付き、手を振って教室に戻って行った。