「そう言えば、先生が追いかけてくれると思った」

それは自分勝手過ぎる。

「でも先生は分かったって言って、それきりだった」

俺には、教師と生徒の関係から始まった恋愛が、長く続くなんて思えなかった。

生徒の思いを無下に断ることもできず、一時の気の迷いだと割り切って付き合っただけだ。

だから、別れを切り出されても、想像通りだと思った。

もう二度と生徒と恋愛なんかしないと誓った。

「もう忘れたよ」

「私は忘れたことなんてなかった。
やり直したいの」

中村は必死に言うが、俺には首を振ることしかできない。

そのとき階下から、缶が転がる音と、それに続いて山田の声が上がった。