「何で来たのか聞かないの?」

彼女はそれを尋ねて欲しかったのか。

俺は女性の気持ちに鈍感なのだと再認識する。

「先生に会いたかったからだよ」

中村ははっきりそう言った。

「ずっと後悔してた」

中村の表情は真剣だったが、俺は笑ってはぐらかす。

「距離を置きたいと言ったのは中村だよ」

そもそも始まりもはっきりしない付き合いだった。

中村には在校中からさんざん付き纏われていて、彼女の卒業後に押し切られる形で付き合うようになった。

数ヶ月後、いきなり夜中に呼び出されて、そう告げられた俺の身にもなって欲しい。