そのうちの一人、凛とした表情で立つ、細身で背の高い女性は俺の顔を見ると会釈した。

俺も思わず会釈したところで林原に脇を突かれる。

「もう劣勢じゃないか」

「うるさいな」

俺たちの様子に他の実習生たちはくすくす笑ったが、彼女だけは気にもせずにきちんと主任の先生の話を聞いていた。

久しぶりに彼女を見た。

大人びて、だいぶ印象が変わった。

学生のときはもっと…。

「佐々本先生、こっち」

考え事をしていたために主任の先生の話を聞いていなかった。

俺は罰の悪そうな顔で呼ばれた場所へ行き、彼女の前に立たせられる。

「数学実習担当の佐々本です」

俺はそれだけ言う。

「中村です。よろしくお願いします」

中村はそう言って笑った。