「本当?」

「ああ。
行きたいとこ、考えておいて」

「どこでもいいの?」

「いいよ」

そう答えると、山田は嬉しそうに笑った。

「約束ね」

俺が頷いたとき、彼女の家に着いた。

山田が家の中に入るのを引き止めて、俺はもう一度、今度はおでこにキスをした。

山田が赤くなっておでこに手を当てるのを見て俺は苦笑する。

「お休み」

俺がそう言うと、山田もお休み、と家の中に入って行った。

二人で出掛ける、というたわいない約束。

まさかそんな簡単な約束が果たせなくなるなんて、このときは思いもしなかった。