目の前に広がっていたのは、青いグラデーションだった。

芸術に疎い俺でさえ、この絵がすごいということは分かる。

山田の目には、俺以上の感動があったに違いなかった。

「お前はブラックでいいんだよな」

洋平はそう言って俺にコーヒーを渡す。

お前は、という言い方が気になった。

山田ならミルクと砂糖でも入れてやるのかもしれない。

「―――山田は、お前に惹かれてるのか?」

俺は彼の顔を見ずに聞いた。

「俺の口から聞いてどうすんだよ」

洋平は苦笑する。

「彼女が俺に惹かれてたら、俺に譲ってくれんの?」

俺は洋平の言葉に、ダメだと即答できなかった。

もし気持ちが離れてしまったとしたら、彼女を俺に縛りつける訳にはいかないから。