彼女は俺の意図が分からないようで、腕の中で不安気に俺を見上げる。

いくらなんでも、キスくらいいいだろう。

俺が彼女の顎に手を置き、顔を寄せようとしたとき、山田は顔を逸らした。

付き合ってる相手にキスを拒まれるのはさすがにショックだった。

だけど山田がそういう子だと分かって付き合ってるんだから、待てない俺が悪い。

ごめん、と俺は山田から離れて頭を掻く。

何やってるんだ、俺は。
山田を困らせたくないのに、一緒にいるとどうも歯止めが効かない。

「ううん」

山田は真っ赤になった頬に手を当てて首を振る。

その様子を見て、嫌だったわけじゃないのが分かり、少しだけホッとした。