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「椎名さんも面白い人だったし、すごく楽しかった」

山田を家まで送ると、彼女は別れ際にそう言った。

あんまりあいつを信用するな、と喉まで出そうになるが、我ながら心が狭いと思って堪える。

「あと、予定あったのに会ってくれてありがと。
お休みの日も先生に会えて嬉しかった。
ちゃんと恋人になった気分」

俺の手をそっと握って照れながら言う彼女に、ちゃんと恋人だよ、と苦笑してしまう。

山田の手の温もりが俺の胸を高鳴らせる。

彼女は急に黙った俺を不思議そうに見つめた。

「―――もう少し、恋人らしいことしてもいいか?」

俺は繋いでいた彼女の手を引っ張り、抱き寄せる。