「ふざけんなよ。
山田はそういうのが通じるタイプじゃないんだから」

「お前のどこがいいのかと思って」

洋平は悪びれもせずに言う。
こいつは学生時代からちっとも変わってない。

「こいつに今言われたこと、全部忘れていいから」

俺が山田の耳から手をどけながら言うと、彼女は少しためらった後、頭を掻く。

「いっぱい聞かれたけど、実はあんまり意味がよく分からなかった」

山田の言葉に俺はホッと息を吐いた。

「椎名さんも、先生なの?」

山田が俺の服の袖を引っ張りながら聞く。

「いや、こいつ異端者だから。
二年のとき急に退学して専門行って…」

「去年この近くの美大を出て、今はアーティスト」

洋平はニッと笑った。