「先生すごい…」

バスケ部の男子たちが去った後、山田が大きく息を吐きながら言う。

「私、慌てちゃって」

「堂々としてればいいんだ。
あいつらもまさか本当に付き合ってるとは思わないだろうし」

だけどこの先、山田と付き合いを続ける限り、こんなことはざらにあるだろう。

「手嶋先生にアリバイ工作を頼んでおかないとな…」

俺は彼女に心配をかけないよう微笑んで言うと、再び山田と歩き出した。

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待ち合わせのカフェに入ると、窓際に座っていた男が、俺の顔を見て手を上げた。

「よぉ」

「―――誰?」

彼は煙草の火を消しながら、俺の後ろにいる山田に目をやる。

「ああ、紹介するよ。
今付き合ってる彼女。
山田、こいつが大学時代からの友人の―――」

「どうも。椎名洋平です」

「あ、山田雛です」

山田は慌てて頭を下げた。