「―――そろそろ自転車起こさないと…」

倒れた自転車を放置したまま山田を抱きしめている図は、さすがに冷静になってみると恥ずかしい。

そう言って山田の体を離すと、彼女は俺を見上げて笑った。

俺と山田は夜道を連れ立って歩く。

初めて彼女を送って行った日を、まるで昨日のことのようによく覚えている。

たわいない話ばかりしていたけど、すごく楽しかったっけ。

あのときは、まさか山田を好きになり、付き合うようになるとは思いもよらなかった。

「本当にいいのか?」

俺は嬉しそうに横を歩く山田を見て尋ねた。