山田のベクトルは俺とは別の方向へ向かい出し、もう交わることはきっとない。

そのうち、彼女の思いは風化し、俺も一時の気の迷いだったと思えるときがくる。

それまで辛抱すればいいだけだ。

俺たちは出会うタイミングが悪かった。
互いが好きになるタイミングが悪かった。

それが分かっているのになぜ、俺の悲しみは消えないんだろう…。

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文化祭が始まった。
文化祭は土日に開催され、日曜の夜に後夜祭で盛り上がるのが通例だった。

俺は毎年クラスの模擬店の客寄せにさせられていたが、今年も例外ではなく、看板とメニューを持って店の前に立たされる。

林原なんかずっと校内を遊び歩いてるんだから、俺のクラスはどうも担任をこき使いすぎているに違いない。

だけど取り分け行きたいところがあるわけでもない俺は毎年手伝ってしまうんだ。