翌朝、俺は校門を過ぎるあたりで山田を見かけた。

彼女の目は泣き腫らしたように真っ赤で、俺の胸は鋭く痛む。

山田が俺に気付いた。

「先生…」

泣かせたのは俺なのに、どんな言葉を掛ければいいのだろう。

「大丈夫だよ」

山田が真っ赤な目で笑う。

「私は大丈夫だから。
気にしないで、先生」

山田ははっきりと俺にそう言い、走って先に行った。

彼女の言葉はしっかりしていて、逆にショックを受ける。

山田が立ち直ろうとしているのが辛かった。

ずっと俺のことだけを考えて、忘れられないでいればいいのに。
そんな風に思ってしまう自分のわがままさに呆れる。