「俺にとっては何?」

山田は無遠慮に聞いてくる。

言葉の続きを聞かれたくなかったのが分からないのだろうか。

何で俺が黙ったのかくらい、察しろよ。

同時に、どうしてこんなに山田にイライラするのだろうと自分が疑問でならない。

振り回されるのに疲れて、佐藤先生の好意に甘えたはずなのに、何でまだ山田のことが頭から離れないんだ。

「何でもない」

「あ、ごまかした。
ずるいよ、言いかけておいて」

山田は頬を膨らませてつぶやく。

「先生はずるい」

山田の顔を見ると、今にも泣き出しそうに見えた。

「先生はいつも何か言いかけてやめる」

そんな風に思っていたのか。