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「先生って料理するんだね」

帰り道、山田がぽつりとつぶやいた。

「四年も一人暮らししてればそれなりにな」

「佐藤先生に作ってもらえばいいのに」

俺はその言動に驚き、彼女の顔を見た。

「私ずっと、あの教育実習生と付き合ってるんだと思ってた」

花火の夜に誤解だと伝えたはずなのに、まだそんなふうに思っていたのか。

俺が好きなのは、目の前にいるお前だと言えないのがもどかしい。

「―――昔の話だよ」

「やっぱり付き合ってたんだ…」

答えてから、しまったと思った。

中村とのことを山田にわざわざ言う必要なんてないのに。

「生徒もありなら、私も対象になったりするの?」

彼女の問いに、俺は慌てて首を振る。

「まさか!」

生徒が恋愛対象だなんて知られたら、山田に引かれてしまうに違いない。