僕は生徒に恋をした

「絶対食べる。
だから、そのチケットくれないかな」

言ってしまってから我に返る。
山田のが欲しいと駄々をこねるなんて、子供みたいじゃないか。

「…いいけど。
お腹壊しても知らないよ」

山田はしぶしぶチケットに名前を書き、渡してくれた。

少しだけ嬉しそうに見えたのは俺の自意識過剰に違いない。

「ありがとう」

俺は教師失格だ。
山田にもらったチケットは、他の生徒にもらったものの何倍も嬉しかった。

「先生って、本当に優しいよね」

山田は笑う。
彼女にそう言われると自分が恥ずかしくなる。

俺は優しいんじゃない、未練がましいだけだ。

山田には武内がいて、自分にも佐藤先生がいるというのに、今なお俺の心は山田に支配されているようだ。