「去年の話でしょ?
もう時効だよ」

そうか、山田と初めて二人で話したのはもうだいぶ前のことになるのか。

俺はいつの間にか山田に恋をし、告白する間もなく振られた。
またこうして、たわいない話ができるようになるとは思っていなかった。

「ありがとう」

焼きそば好きなんだ、と言って山田からチケットを受け取り、上着のポケットにしまった。

それを見て、あ、と山田が思い出したようにつぶやく。

「後ろに名前書くの忘れてた」

どうやらチケットの裏にサインがないものは無効になるらしい。
そう言えば、他のチケットにも名前が書かれていたかもしれない。

「先生、名前書くから一度返して」

「ああ」

俺はポケットに手を入れて止まる。

複数枚のチケットが入っていて、どれが山田のなのか、触っただけじゃ分からない。