チケットを全て拾い終わった頃、山田が階段から降りてきた。

「全部で十枚かな」

俺が窓越しに山田に渡すと、彼女は大きく頷いた。

山田とこんなに近くで顔を合わせるのは夏以来だった。

俺は窓から校舎に入ると、緊張を隠すように、靴に付いた土を落として言う。

「中履きで外に出たのは内緒な」

以前主任にばれて、こっぴどく怒られたことがあったっけ。

「ありがと」

山田は俺の手から受け取ったチケットを嬉しそうに握り締めた。

「―――あ。
お礼に、先生に一枚あげるね」

山田はその中の一枚を俺に渡す。

「私、下ごしらえ担当」

「人にカレーかけるようなやつは、調理はやめた方がいいんじゃないか」

俺の冗談に、山田は頬を膨らませて怒ったかと思うと、自分でも耐え切れず笑い出した。