彼女とは夏の始めに付き合いだし、もう二ヶ月以上になる。

数回はデートのようなこともしたし、いい雰囲気になることも度々あった。

だけど俺はキス以上のことがまだできずにいた。

「―――佐藤先生こそ、男子生徒からチケット渡されてたの見ましたよ」

「嫉妬した?」

「少しね」

俺は笑って答える。

一体どこから漏れたのか、俺と佐藤先生の交際の噂は、夏休みが終わると同時に広まった。

生徒ばかりでなく教員にも浸透していたため、特に隠すこともしなかった。

佐藤先生は素敵な女性だった。

年上だけあってしっかりしているし、賢い。
不満なんてなく、理想の彼女に違いなかった。