季節は秋。

「佐々ちゃーん。
うちのクラスおでん屋出すんだ、食べに来て」

俺は廊下ですれ違った生徒からチケットを受け取る。

「チケットあれば無料だから、絶対来てね」

「ああ、ありがとう」

文化祭が来週に迫り、校内はお祭りムードだった。

三年のクラスもこの日ばかりは受験など無関係になる。

笑顔で受け取りはしたものの、これでチケットは何枚目だろうか。

おでん、焼きそば、豚汁などなど…。

こんなに食べたら胃がおかしくなりそうだ、などと考えながら俺はチケットを上着のポケットにしまう。

「本当に生徒に人気あるわよね」

俺の横で佐藤先生が笑った。