まるで抱きしめられるような形になったが、緊張か、あるいは酔いのせいなのか、体が動かない。

彼女の甘い香りが立ち込める。
それは、どこかで嗅いだことがあるような気がした。

「ずっと先生を見ていました」
佐藤先生の視線が俺の焦点の合わなかった目をとらえる。

そして気付く。
この香りは昨日嗅いだものだ、と。

昨日、山田が転びそうになったのを支えたときに感じた香りだ、と。

次の瞬間、俺は目を閉じていた。
その香りに意識が遠退いていくのを感じる。

ただひたすら眠かった。

******

目を覚ましたのは翌朝だった。

時計を見ると、10時を少し回ったところで、そろそろ部活に向かわなくてはいけない時間だ。

俺は二日酔いの酷い頭を抱えてベッドから起き上がる。