どちらかと言えば、落ち込んでいるのも、やけ酒を飲みたいのも俺の方だけど。

「彼女、好きなやつでもいるのかなぁ」

林原の言葉に、俺はさぁな、と答える。

彼女の口から直接気持ちを告げられたことはまだないのだから、嘘ではない。

「お前、聞いたことないの?
同じ数学科だろ」

「ない。
そもそもあまり親しくないし」

あまりに素っ気ない返事だったからか、林原が驚く。

「お前って本当に女っ気ないよな。
つるんでるのだって、俺とか手嶋先生くらいだろ?
成人男子としてそれでいいのかよ」

林原は、モテるくせにもったいない、と付け足す。

余計なお世話だ、と俺は少しムッとした。