「佐々ちゃーん、聞いてよ!
山田、オッケーだって」

武内は両腕で大きな円を作って俺に見せた。

きっと彼には悪気はない。
ただ、さっき立ち会わせた俺に報告をしてくれただけなのだろう。

だけど俺にとって、それは今一番聞きたくない言葉だった。

俺は彼に聞こえるか聞こえないかの大きさで、良かったな、とつぶやいた。

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「お前、少しは相談に乗れよ」

飲み屋で隣に座り、くだを巻くのは林原だ。

どうやら彼は昨日、佐藤先生との見回り中にいい関係になれなかったのを悔やんでいるようだった。

「せっかくチャンスだったのに」

そう言って林原はビールをあおり、俺もそれに付き合う。