「そうじゃなくて、私は…」

俺はそんなに鈍い方じゃないと思う。
今まで人並み程度には恋愛も経験してきたし、彼女が言おうとしていることの予想がついてしまった。

「…じゃあ、俺はこれで」

俺は彼女が口を開く前に席を立つ。

彼女が俺に好意を持ってくれてるのは何となく察しがついている。

もし告白されたとして、特定の恋人がいないとなれば断るのも難しい。
まさか好きな人がいる、と山田の名前を出すわけにもいかない。

結局のところ、彼女に言わせないのが一番いいはずだ。

佐藤先生が消化不良な顔になったのが見えたが、俺は気付かない振りをして過ごした。