一度の恋しか経験したことがないしあの人以外を想うつもりも欠片もないわたし
ですらこの空間の空気が男女間の恋愛の始まりだとは到底思えないし、彼は平気でこんな台詞をわたしに掛けるのだから多分他の女の人にもこんな言葉を囁いてその気にさせてるに違いない。それはきっと両手で数えきれないくらいなんじゃないかとわたしは浅はかに勘づいていた。



だからわたしも平気で返す。





「わたしは居たくない。アンタ変だし」
「残念」



含み笑いを浮かべた彼の瞳に映るわたしはどんな女なのだろう。やっぱり、可愛くないやつなんだろう。そんな自己完結をしている間に気が付けばひとりだった。