「ねぇ、」
「んー?」
手を繋いだことで、なんとなく、前よりもっと近づいた距離。
こういうのんびりした空気、あたしは好きだなぁ。
「連君はさ、前にあたしのわがまま1つ聞いてくれてるって言ったの覚えてる?」
「あたぼーよ」
連の言い方が面白くて少し笑った。
「これは“わがまま”に入る?」
あたしは繋いだ手を少し上に上げた。
「これは俺もしたかったから、わがままには入れません」
「そっか……」
ならよかった。
「でも……」
連が言い淀んだ。
あたしはいつも連がしてくれるみたいに、連の言葉を待った。
「こんなかわいいわがままなら、いくらでも聞いてやんよ」
とびっきりのふにゃりとした笑顔。
「ありがとう」
あたしたちはゆっくり歩き始めた。


