荒井君の顔をチラッと見てみれば優しい顔をしていた。 怒っているわけではない。 焦っているわけでもない。 ただあたしを安心させようとしている顔。 あたしは荒井君のふにゃりと笑った顔と、優しい顔と真剣な顔しかしらない。 もっといろんな顔を知りたいと思うし、いろんな荒井君を知りたいと思っている。 「……クラスには、荒井君を名前で呼ぶ人がたくさんいるでしょ?」 「あぁ、まぁね」 「それで……、その……」 言葉が続かない。 自分の頭の中でも整理できてないみたいだ。