よく考えたら……いや、よく考えなくても誰かとこうやって寄り道して帰るなんて、初めてだった。
「っあ!」
「どうしたの?」
「なんでもない」
突然声を出したあたしに荒井君は特にびっくりする様子もなく、クレープを頬張りながらこちらを見た。
――気付いちゃった
森下千鶴、初めて自分から幸せを見つけました。
こうやって、誰かと寄り道する。
これもあたしが楽しいんだから、幸せじゃないわけがない。
――こういうことだったんだ。幸せって。案外簡単なんだな
「……なんか笑ってる」
荒井君が食べおわったクレープの包み紙を丸めながら不審な目をあたしに向ける。
「うん、いいことあった」
初めて自分から見つけた幸せ。


