自分の席に着く。
しばらくすると、幸葉と小峰さんも戻ってきた。

岬と瑞浪。

出席番号順の座席は、もちろん前後だ。普段は嬉しいこの席順も、今日は悪夢のように思える。聞きたくはないが、小峰さんの声はでかいから、嫌でも二人の話声は耳に響いた。

聞きたいけど、聞きたくない。どうか見間違いであってほしい。

幸葉が兄貴のことを好きだなんて、耐えられない。

今までもこれからも…明日も明後日も、ずっと…
俺のことも兄貴のことも、ずっと兄弟だと思ってくれてればいい。男として見られなくていい。そしたら、俺も兄貴も気持ちを押し込める。三人でいつまでも一緒にいればいい。

もし女として彼女が目覚めれば、俺も兄貴もこのままではいられない。絶対に気持ちが溢れ出ると思う。そして傷つけ合いたくなくても、この想いは止められそうにない。


だから、幸葉…
お願いだ。兄貴を選ぶな。

俺も兄貴もお互いを嫌いになんてなれないし、嫌われたくない。



けど、俺も兄貴もバカみたいに

幸葉のことがすきなんだ。






聞こえてきた会話に心が絶望する。

幸葉…




小峰さんが、
そっとこちらを見ていた。