意味不明な事を言い出す私に
顔をしかめながらも、
凛は少し考えてから答えた。

「俺、クレープの方がいいな。」
「そうなの?」
「俺、甘党なんだけど。悪いか?」
「悪くはないけど……」

予想外の返事に言葉が見つからない。
 
「はは、冗談だって。そんな
 あからさまに困った顔を……」
中途半端な区切れに顔を上げると、
凛が鎖を見つめていた。
 
……まさか……
 
凛の腕を掴み明かりに当ててみる。
間違いなく鉛色に変わっている。

「やった!凛、やったね!」
「俺より嬉しがるな。」

飛び跳ねて喜ぶ私を見て、笑う凛。
そんな凛の笑顔を見て思う。
凛には笑顔が一番似合う。

その後の一週間、
練習はますます厳しくなり、
さらに身体が痛んだけど、
何といってもゼノには
拾ってもらった恩がある。
 
何としてでも成功させなければ。
 
ゼノの所で暮らし始めて一ヶ月。
準備が整った所で、
いよいよ城に行く事になった。
 
久しぶりに袖を通す東洋の服。
何だかとても動きにくく感じる。
ゼノは何も言わずに私達を見送った。
 
仲間のクイルとアッサが先を行く。

今日は、九月一日。