一撃食らわせてやらないと、
こっちの気が済まない。
私は一歩前に踏み出て、はっとした。

これは……
 
慌てて凛の手を掴むとブンブン振った。
「何だよ。」

いきなり手を掴まれて
不機嫌そうな凛を無視して、
私は黙って鎖を指した。
凛は自分の腕を見つめ、目を見開いた。

「おい……」

スカイチェーンが、灰色になっている。
それはもう黒ではなく、墨色だった。

私は何となく鎖の外し方が
分かった気がした。
そして今朝見た風の鎖も
この色だった事を思い出した。

楓が風の鎖を外すなら、
凛の鎖は私が外す。

「私、凛の鎖を外せるように頑張る。
 上手く出来るか分からないけど、
 何もしないよりずっといい。
 きっと、外してみせるから……
 だから、凛も生きる事を諦めないで。」

「……分かった。」
凛は澄んだ瞳で私の目をじっと見た。
ここへ来てから初めての事だ。

やっと追いついてきた楓が呟いた。
「うちら、着いたんじゃないー?」

目標にしていた大きな塔、
それはもう目と鼻の先にある。
立派な城が、夕陽に輝いて見える。

地中海に面した貿易盛んな古代都市、
アレキサンドリア。

都に着いたのだ。