3年分のキス






心とは関係なく、涙は溢れてくるのだ。
心臓は早く鼓動を打つのだ。

ぐっと歯を食いしばって立ち上がり、剥きかけの桃と包丁を手に取った。


手が、ふるえる。

桃など上手く剥けるはずがなかった。
思った以上に動揺しているみたいだった。




「…った」




気が付けば、指から血が溢れ出ていた。
包丁で指を切ってしまったらしい。

痛みは、感じなかった。
だから水で流そうとも思わなかったし、何か処置をしようとも思わなかった。


いっそ、このまま…、




「…ちょ、何してんの」




右耳に、かすかに届く誰かの声。