3年分のキス






そんな、はずはない。

彼な、はずがない。


心の中ではそう思っても、わたしの耳は素直にその声に反応してしまっていた。
鼓動が早くなってくる。目を閉じる。

振り向くことなど、できなかった。




「あの…、トイレって、どこ?」




今度ははっきり聞こえたその声に、心臓が飛び跳ねた。

この声は、
たかおちゃんだ。

忘れるはずがない、あの優しい声だ。


愛しいあの人がすぐ近くにいる。
この2年間、遠くにいた彼がすぐそばにいる。

振り向きたかった。彼の顔を見たかった。


心とは反対に、体は素直に動いてくれないものだ。