わたしは思わず息を飲んで 今日で会えなくなる彼の姿をみつめた 今、ここで思い出してくれたら なんてあり得ないことを考えながら あまりに長く見つめすぎたのか 彼が不思議そうな顔をした 「……退院、おめでとう」 彼はわたしが手渡した花束を受け取った 「…菜の花、ですか」 わたしが渡したのは菜の花の花束だった 初めて恋人同士になれた日に行った 菜の花畑を思い出してくれればと 「…きれい、ですね」 そんなわたしの願いも虚しいものだった 彼にはもう届かない