一同が呆然とする。
「あの、局長、なぜ甲冑を?」
土方も面食らいながら、近藤に聞いた。
「もち風邪予防よ。最初はさ、全身アレにしてみたんだけど、ゴム製品って空気通さないじゃん?風邪予防どころか死にかけたよ。息できなかったら、キスどころじゃないもんね」
そう言って笑い飛ばす近藤に、斉藤は得意の妖しい笑みを作りながら拍手を送った。
「さすが近藤さん。一度は試したんだ」
「局長、流行風邪をなんだと・・・」
唖然とする土方をさておき、近藤は両腕を高々と上げて、沖田・斉藤以下の隊員たちに向かって叫んだ。
「これでへっちゃら!さあ、どこからでもキッスして来い!」
「よーし!」
斉藤がぴょんと飛び上がり、低い姿勢で近藤との間合いをつめる。近藤も腰を落として、じりじりと右回りに移動しながら、斉藤との間合いをはかった。
あっけに取られている沖田に、先に我にかえった土方が、壁にかけてあった竹刀を投げてよこした。
「俺が局長をやる。今日は沖田が斉藤をやれ」
沖田は竹刀を握ると、ため息をつきながら立ち上がった。
(やれやれ。予防なんかしなくったって、ここの人たちは風邪なんかひかないよ・・・)
土方、近藤、斉藤、沖田が直線上に並んだとき、オトコパレスの稽古場に、二人の男の悲鳴がこだましたのだった。