それは悪魔の宴であった。
沖田は二人の異様な、我を忘れた熱気に気おされ、今にも逃げ出そうと腰を浮かせた。
「あきゃーッ!」
甲高く叫ぶと同時に、斉藤が塀を乗り越え外に飛び出していく。近藤も「突撃ーッ!隣のバンコランーッ!」、ときの声を上げ、ドナドナの尻を叩きオトコパレスの正面門に向けて走っていった。
呆然とする沖田の背後に、何も知らぬ土方がふらりとやって来た。
「おや、あの二人はどうした?」
「あっ・・・さ、さあ?どこかに出かけたみたいですよ。ところで土方さん、今日が何の日か知っていますか?」
「クリスマスだろ、知ってるさ。ほら、沖田にプレゼントだ」
そう言うと、土方は懐からハート型のチョコレートを取り出して沖田に渡した。
「義理だからな」
そっぽを向いて頬を赤くする土方を、微妙な気持ちで沖田は見つめた。
(この人たち、どこまでクリスマスのことを知らないんだろう・・・)
塀の向こうのほうから、近藤、斉藤の奇声と、町人たちの悲鳴が聞こえた。