その日の斉藤は二人羽織だった。
「なにしてる斉藤?と言うか、たぶん近藤さん?」
沖田はぎこちない格好で歩いてくる斉藤と、彼の動きを操っているであろう背後の人物に声をかけた。
「沖田さんは不思議なことをおっしゃる。どこに近藤さんがいると?」
「・・・そんなことするの近藤さんだけだろう?」
「ハハハ、なんのことやら。アッ!右手よ、そんなところをつまんでは駄目ナリ!」
斉藤が悶える。ひとつの着物の中で二人の男がもみ合っている異様な光景を眺めながら、沖田はため息をついた。
「土方さん今日も病院行っちゃったし、原因のこの人たちはこんなだし・・・」
オトコパレスの玄関から、隊士たちの「土方さん、お疲れ様です」との挨拶が彼らに聞こえた。
三人がいる部屋に土方が入ってくる。彼は今日もまた、うつろな目をしている。おそらく薬物を過剰に摂取しているのだろう。
「沖田と斉藤だけか・・・近藤さんはどうした?」
沖田は目を瞠った。