*Bartender & kitten 3*
「ねーねー、お酒飲ませてよ」
カウンター越しに大きな猫目をクリクリさせて、身を乗り出して俺にそう訴えてくる仔猫ちゃん。
「未成年の飲酒は、法律で固く禁じられています」
「ちぇー。ケチ」
「ケチで結構」
口を尖らせ、スツールに身を沈める仔猫ちゃん。
薄暗い地下のライブハウスの一角。
雇われバーテンの俺の最近の楽しみは、週末になるとやって来る、この仔猫ちゃん。
ある日、フラりと迷い込んできたこの仔猫ちゃんは、すっかり俺になついてしまった。
無防備で危なっかしいこの仔猫ちゃんは、俺が見張っていないと簡単に連れ去れてしまいそうで。
今もほら、仔猫ちゃんを気にしてチラチラと視線を送っているガキ共に俺はさりげなく威圧的な牽制をかます。
そんな俺の心中を知ってか知らずか、この罪作りな仔猫ちゃんは、ビッグワッチのニット帽から長くふわふわに伸びた髪の毛を、指先でくるくると弄んでいた。
「はい。コレ、俺の奢りね」
そう言って俺は仔猫ちゃんの前にグラスをコトリと置いた。
「プッシーキャットじゃないよ?コレ」
仔猫ちゃんは目の前に置かれたグラスをまじまじと覗き込んだ。
「もしかて、お酒?」
「な訳ないでしょ、シンデレラって言うの、ノンアルコール」
「シンデレラ?」
「そう。橙色で綺麗でしょ?」
「うん。素敵な名前−」
「飲んでみて?」
仔猫ちゃんはグラスを持ち上げ、こくりと一口飲んで。
「おいしー!」
「でしょ?」
「シンデレラって確か、12時には魔法が切れちゃうんだよね、あたしと一緒だ」
「今は魔法がかかってるの?」
「だって12時にはここ閉まっちゃうんだもん…」
そう言ってグラスに口をつけたまま、上目使いで俺を見上げる仔猫ちゃん。
「もっとあなたと一緒に居たいよ…」
…………何その必殺技…
仔猫が雌猫に変化した瞬間を見た。
*end*

