*short.short*



*Last order*


「5回目ですね?」


週末の会社帰りに時折ひとりで訪れるバー。


いつものカウンターの席に座って飲んでいると、男性がそう言ってきて、私の隣に腰かけてきた。


「5回目?」


私は訳がわからずその人に訊ねると。


「ここで貴女に合うの、今日で5回目なんです」

「そう……、ですか…」

「隣…、いいですか?」

「もう座ってるじゃないですか…」

「ハハッ。そうでした。貴女に会えたのが嬉しくて、ご一緒しても?」


彼の目を細める笑顔に警戒心は何処かに行ってしまって。


今季購入したばかりの可愛いコートをおろしたし、仕事で良い事があったし、お昼に自動販売機でお茶を買ったら、もう一本当りが出たし、今日はとくにお酒が美味しいし。


何となく今日は気分が良くて。


「いいですよ」


快くOKした。


彼とのお喋りはとても楽しくて、時間が経つのもあっという間で、いつの間にか店内は私達二人だけに。


「お客様…、そろそろラストオーダーになります」


カウンターのバーテンが私達にそう言って。


「おっと、もうこんな時間?最後に何か頼みますか?」

「いえ、もう私は」

「それは困りました…」

「何がですか?」

「もう帰ってしまうでしょ?貴女」

「そうですけど…」

「まだ僕は貴女を口説いていません、最後に何かオーダーして頂かないと…」

「……ラストオーダーで口説けるんですか?」

「はい。自信あります」


にっこりと柔らかく笑う彼に、私はラストオーダーをバーテンに告げた。



*end*