*short.short*



*Every day*


映画やテレビドラマや恋愛小説や、運命的な出逢いを夢見てたけど。


曲がり角でぶつかった人はメタボなおじさんで。


ハンカチを拾ってくれた人は腰の曲がったお婆ちゃんで。


満員のエレベーターで、シャツに髪の毛が絡まってしまった人は会社のお局様で。


運命の出逢いなんて起こる筈もなくて、実際は毎日仕事と代わり映えのしない日常の繰返し。


恋愛に夢見過ぎなのかしら?


って思うけど、やっぱり乙女としてはそんなシチュエーションに憧れちゃうじゃない?


周りにいいオトコが居ないのがいけないのよね!


「はぁ…」

「どした?疲れた?」


金曜の夜。
アポの帰り道。


今日はひとつも契約が取れなかったのに合わせて、そんな事を考えていたもんだから、無意識にため息が溢れてしまった。


隣を歩く男は同期入社で営業のコンビを組んでいる彼。


「……別に」

「そか?あー、腹減ったな−、早く報告書出して飯でも食いに行こうぜ?それとも飲み行く?」


どうせいつもの居酒屋飲み食べ放題コースでしょ?


全く。ホントに周りにはろくな男が居ないわ。たまにはお洒落なダイニングバーにでも連れてけっつーの!


信号待ちで二人して並んで立っていたら、不意に彼の手に指先が触れてしまって。


「何その手?冷たすぎ」


10月も終わりに近付いてきた夜の街の寒さは、既に冬を思わせる程で。


彼は私の手を掴むと無造作にジャケットのポケットに突っ込んだ。


「……もう片方の手は?」

「温めて欲しい?」


平凡な日常が、ちょっとだけ色づき始めた瞬間。


*end*